今、子どもたちが「イルカの耳」を必要としている理由(わけ)
私たち大学生は「子ども社会の普通」については、年齢的に近い立場から見えてくる部分もあり、その視点がお役立てできればと思っています。日頃SNSを活用した活動において、子どもたちが自分の気持ちや感情を大人に伝えようとしても大人側に汲み取ってもらえない、という声をよく耳にします。
特に、子どもたちが日常的に経験する「子ども社会の普通」は、大人世代には理解しにくいことが多いのではないでしょうか。例えばLINEグループから外される不安から深夜までスマホを使い続ける子どもの心、「既読スルー」を極端に怖がり、人間関係に過度な気遣いをする心など、SNSで24時間、人間関係マネジメントをしているのが今の子どもたちです。
子どもたちは自分が悩みを抱えている背景を説明することなく、直情的に自分の気持ちや要望を伝えようとします。そのため、大人にはその必要性や重要性が伝わりにくくなってしまうこともあるでしょう。しかし、私たちZ世代は自らの年齢と近しい子どもたちの「直情」や「普通」を受け止めてあげられる感覚を持ち合わせています。特別な説明をされなくても意図を理解し、共感することができます。
このように、大学生の力は、子どもたちの声をより深く理解して、誰でも分かる言葉に翻訳し、大人たちへ子どもたちの本音を伝える橋渡しになることができる。子どもたちが「生きやすい」と思える社会を目指すのが、「イルカの耳プロジェクト」を立ち上げた背景です。
私たちは日々、子どもたちが本当の気持ちを理解してくれる「イルカの耳」のような存在を求めていることに気づきました。そして、その役割を果たせるよう活動を続けています。
イルカの耳研究会メンバーが所属する大学
・大阪大学 ・九州大学 ・東京大学 ・法政大学他(五十音順)
SNSピアサポーターの資格制度と研修
運営委員会が定めた資格を取得しなければ、SNSピアサポーターに就くことはできません。研修後の筆記試験で満点を取得した者のみが実技研修に進むことができます。実技研修では複数の専門家による審査を経て、合格者は実技試験(8時間以上)を受験する資格を得られます。
実技試験に合格した後も、指導員と共にSNSピアサポーターとしての経験を積み重ね、独り立ちが認められた者のみが子どもたちへの対応を担当できます。そして、指導員の資格取得を目指し、継続的に学び続けています。
なお、SNSピアサポーターは日頃から自治体が主催するSNS相談を担当している豊富な経験を持つ者たちです。
イルカの耳研究会メンバーが携わった主な公共事業(OB,OG含む)
文部科学省 | SNSを活用した相談体制の在り方に関する調査研究(2019~2021) |
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内閣府 | 子ども・若者総合相談センター強化推進事業(2019) |
浜松市 | 浜松市SNSを活用した若者相談支援事業(2020~2023) |
愛知教育大学 | 愛教大こころサポート「ノンステップ」 |
熊本連携中枢都市圏 | こころの悩み相談@熊本連携中枢都市圏(2021~) |
大阪府教育センター | すこやか相談@大阪府(2021、2022、2024) |
福岡県 | おいでよ きもちかたりあう広場/メタバースを活用した居場所づくり(2023~) |
福岡県 | きもちよりそうライン@福岡県(2022~) |
熊本県 | 熊本県SNSを活用したこころの悩み相談(2022~) |
西東京市 | こころHale・Hale@西東京市(2021〜) |
西東京市 | いこいーな窓口@西東京(2023〜) |
子どもたちが安心できる体制の確保
子どもたちへの対応はチームで行います。一人の判断では対応せず、チーム内には必ず心理系の専門家(国家資格保持者かつ豊富な経験を有する者)が参画し、適切な管理指導を行っています。
また、子どもの会話内容によっては、安全確保の観点から専門家が直接対応できる体制を整えています。
さらに、多様な価値観や趣味、思考に適切に対応できるよう、大学生同士が相談できる環境に加え、専門家への質問や助言を受けられる体制も整えています。専門家は大学生と子どもたちの会話を監視し、必要に応じて注意喚起を行うなど、質の高いピアサポート環境を構築しています。子どもたちがアクセスする度に異なるSNSピアサポーターが担当しても、一貫性のある対応ができる独自システムを構築しました。